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2007/03/09 (Fri) 00:32
虹とギターと吹き抜けた風と 第3話

虹とギターと吹き抜けた風と
第3話


rain.jpg

 雨の日は、ふたりで部屋に閉じこもる。
 窓ガラスに打ちつける雨の滴を見つめながら、ふたりきりで過ごす。
 雨の音に混じって、時々聞こえる表通りの音。車が過ぎる音、人の笑い声や猫の鳴き声。
 雨の日は、そんな音が、なぜか透き通って聞こえるから。
 そして雨の日は、空を覆う雲が、ふたりの世界を隔離してくれているみたいだから。
 ふたりで、何も話さずに、その時間を楽しむ。
 沈黙と、ふたりでいられる時間を、密かに。
 * * *

 運命、とか。
 オンナって生き物は、そういうのを考えたがる。
 信じる、とか、信じない、とかじゃない。
「これって運命なんじゃないの?」みたいに思って、そのトキメキみたいなものを楽しんでるだけ。
 それが本当に運命ならばしあわせだし、そうでなかったとしてもやっぱりね、と思える。
 そういう生き物だと思う。
 根ではロマンチストだけど、実際はけっこうクールで、ドライで、リアリストだ。
 オトコのほうが、純粋にロマンチストなんだっていう意見にも、何となくうなずける。
 かくいうわたしもオンナなので、運命とか、考えてみる。
 昨日の、サトルとの出会い。
 あれは運命だったんじゃないの?って。
 だってホラ、その証拠に、いまでも耳の奥で、ギターの音色が響いて、頭から離れない。
 そんなことを思いめぐらせて、仕事に身が入らない週も後半のぽかぽかした午後。
 ふと思いついて、パソコンで検索エンジンを立ち上げて、駅名とサトルの名前を入れて、クリックしてみる。
 まさかと思ったけどけっこうヒットして、でもそのほとんどが見当違いのものばかり。
 それでも時間つぶしにひとつひとつ見ていくと、全体的にオンナノコらしい色合いで統一された、あるブログを見つけた。
 朱、と名乗る女の子が書いている、明らかにサトルと思われる人物のファン日記のようなものだった。
 「朱」の読み方が分からないので、とりあえず「シュ」と頭にインプットして、そのブログを読んでいくと、今日はこんな曲をやってくれた、とか、こんな話をした、とか、そんなたわいのない日記が続いていた。
 他人の書いた文章で、別の誰かのことを知るって面白い。本人ではなく、自分でもない、もうひとりの目や感じ方のフィルターを通して、誰かのことを知る。
 朱のフィルターには、明らかにサトルに対する好意がかかっているから、ただひたすら好青年な、ギターを愛する人物像が目に浮かぶ。
 このブログを読んでからサトルに会った人は、朱のフィルターを通してサトルを見ることになるのかもしれない。
 読む前に、他人のフィルターを通さず、サトルに出会えて良かった。
 それもまた運命なのかもしれない、なんて都合の良いことを考えながら、上司の目を盗んでみていたブログをそっと閉じた。
pc.jpg


続く

(吉本こずえ)
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