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2007/03/09 (Fri) 00:24
フルーツタルト vol.7

フルーツタルト
Vol.7 *Chapter 6. Departure to a new stage*


fruit7.jpg

1.里中梨生、Wスクールを決意する
 空き巣事件の後、元気がなかったミノルを励ましてあげたくて、すごく久しぶりに作ったケーキ。
 そのケーキが、自分の人生を変えることになるなんて、そのときは思いもよらなかった。
 私が作った不格好なケーキを、お世辞もあってだろうけど、食べるたびに美味しいと、元気が出ると言ってくれたふたり。そんな効果が本当にあるのか分からないけれど、そんなことで人に元気があげられるなら、なんてすごいんだろうと単純に感動してしまった。
 モモに以前言われたこと。
「少しでも自分が「おもしろいな」と思ったり、興味を持ったものを、自分で見逃しちゃだめだよ」
 不安も迷いもあるけれど、とりあえず見逃さないで食いついてみようと決意した。
 おそるおそる親に話したら、大学は卒業することを条件に認めてくれた。これで4月からは大学と専門学校とのWスクール。もちろんバイトもしなくちゃいけないし、忙しい毎日が待っている。
 でもきっと、今までの日々よりも、自分自身で楽しんで生きていけそうな気がする。

 2.神田桃子、あこがれの街に旅立つ日
 すごく晴れた朝だった。本当に、「雲ひとつない」という表現がぴったりなほど。
 どうしてもこの部屋から旅立ちたくて、実家に荷物を運んだり、留学の準備をしたりで、今日までに実家とこの部屋をなんど往復したことか。
 新しい進路を決めたリオとミノルも、実家にいる異常にテンションの高い母に気圧されながらも、ガンガン手伝ってくれた。
 トランクと、大きな旅行鞄ひとつぶら下げて、見知らぬ街に、ひとり向かう。
 大丈夫。
 鞄の中には、リオがくれたクッキーのレシピと、ミノルが撮った海の写真。これを見ればいつだって、今の気持ちを思い出せるから。
 言葉や人種や生活習慣、いろんなものが異なる人たちとたくさん出会うだろう。それでもきっと、夢を追う共通の気持ちがあれば、きっと理解し合える、友情をはぐくめる。
 そしてまた迷ったときには、離れてもそんな存在があるからこそ、新しい一歩が踏み出せるはずだから。

 3.栗林 実、帰郷
 久しぶりの故郷は、なぜか驚くほど良いところに思えた。
 見慣れた町並みも、聞こえてくるちょっとした訛りも、ただ見上げた空さえも。
 海の写真も良いけど、もちろん海には潜り続けるけど、こんなふとしたふるさとの風景も、写真に撮っていきたいと思った。
 いつか自分の写真で、例えばモモの思いのこもったダンスのように、例えばリオの甘酸っぱいケーキのように、人に何かを感じてもらいたい。
 遠く離れた空の下で、今日もつまづきながら生きている親友を思いながら、今日もありふれた風景に向かってシャッターを切る。


 3人で過ごした最後の日、囲んだテーブルにはリオ特製のフルーツタルト。
 たくさんのベリーと黄桃、白桃、そして洋梨…そんな色とりどりの果物たちが、香ばしいタルト生地と甘さ控えめのほんのりレモン風味のカスタードの上で、お互いを引き立て合いながら共存してる。
 まるでこの1年の、3人のように…


fin…

(吉本こずえ)
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