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2007/03/09 (Fri) 00:23
フルーツタルト vol.6

フルーツタルト
Vol.6  *Chapter 5.  Each Decision*


fruit6.jpg

1.berry says...
「専門やめて、ここを出て、実家に戻ることにしたよ。」
 そう決意を伝えると、モモもリオも一様に驚いていた。
 どういう経緯でその結論に?と聞かれると困る。それこそ"天の声"ってやつだ。親父の形見のカメラを手にいろいろと考えを巡らせているうちに、ふっとその考えが浮かんだんだ。そしてそれは、他に選択肢があり得ないほど、完璧な結論に思えたんだ。
 写真はやめない。潜るのもやめない。両方とも、ここじゃなくても充分続けていける。それさえ続けていけるなら、自分の夢は追えるんだ。
 ただお金だけを食いつぶして都会にいる必要性を、空き巣事件があってから、痛烈に感じなくなっただけのこと。
 そう話すとモモは、複雑そうな表情の中にも、理解を示してくれた。
 リオは、とにかく驚いて言葉も出ない、というような様子だった。
 そして、そんなリオに追い打ちをかけるように、モモが口を開いたんだ…

2.peach says...
「わたしも…オーディションに受かったんだ。ずっと目標だったオーディション。」
 補欠合格だった。けど、合格した子が、直後のレッスン中にアキレス腱を切る大けがをしてしまって、2度と踊れなくなってしまった。彼女の代わりに行けることになった。
 「棚からぼた餅」とか、なんとかとか、そんな気持ちには全然なれなかった。自分自身のことじゃないのに、なぜか涙があふれて止まらなかった。
 最初は辞退しようかと思った。でも彼女に怒られたよ。自分の夢のためなら、チャンスを無駄にするなって。彼女の分まで、夢を追ってくれって。
 それでわかったんだ。臆病になってた自分に気付いた。届かないと思ってた遠い夢が、突然叶ってしまったから、そこに足を踏み入れることに臆病になってた。そんな臆病風、2度と踊れなくなってしまった彼女に対しても、夢のために真剣に頑張ってきた今までの自分にも失礼だよね。
 だから決めたよ。レッスンを受けるために、ニューヨークに行く。不安がないワケじゃないけど、前に進む以外に夢をつかむ方法なんて、ないから。
 そう告げると、ミノルは強い決意に満ちたまなざしを返してくれた。
 リオはうつむいたまま、黙り込んだ。何かを必死に考えているように…

3.pear thinks...
 2人の決意を聞いてるうちに、相談しようと思っていたことが話し出せなくなった。
 2人とも、自分で悩んであがいて考えて、自分の生きる道を決めてる。自分で描き始めた自分自身の夢の絵を見せて、「こんな色でいいのかな? こんなタッチでいいのかな?」なんて聞けない。そんなもの、自分でしか判断できないことだよね。
 決める? 決めちゃう? 誰にも相談しないまま?
 そんなこと、生まれてこのかた、したことがなかったかもしれない。
 自分の甘えを知る。もういい加減、ひとりで立って、ひとりで決めなきゃいけないときが来てるんだって、神様が言ってるのかもしれない。
 でもまだ、口に出せないわたしの決意。そこまでの勇気は、今の自分にはまだない。
 2人とも、心配そうにわたしを見てる。
 心配させちゃいけないよね。2人の決意を受け止めて、返さなきゃ。
 やっとのことで顔を上げて、必死の笑顔を返した。
「2人とも、頑張ってね。」
 そんな程度のことしか言えない自分が悔しい。
 別れの日までには、もうちょっと成長してたい。自分の決断を話したい。


 3人での時間に、終わりの足音が近づいてる。
 出会ってからあと少しで1年の、日差しが柔らかくなってきた冬の午後のこと。


to be continued...

(吉本こずえ)
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